VUCA時代のリーダーの役割 ~その2 ティール型組織、発達志向型組織(DDO)、ホラクラシー型組織~
前回のブログ「VUCA時代のリーダーシップ ~その1 リーダーの役割が変化している背景とは~」では、リーダーシップの発揮のしかたが変わりつつあるという点をまとめました。今回は、最近の組織開発論として注目を集めている3つの組織論を解説していきます。
3つの組織論に共通するのは、「トップダウン型」や「ピラミッド型」と呼ばれている組織の問題点や弊害を踏まえ、一人ひとりを統率ではなく信頼する組織体制を作っている点です。しかし、複数の人が集まって成果を発揮することは大変難しいことであり、コンセンサスを作ること、失敗を克服して発達させていくことが重要だとしています。
フレデリック・ラルー氏が提唱するティール型組織
ティール型組織とは、Amazonでの書評の解説を抜粋すると、「自主経営(セルフ・マネジメント)、全体性(ホールネス)、存在目的を重視する独自の慣行をもつ進化型組織」のことを意味します。
権力をトップに集め、同じ組織に働く仲間を権力者とそれ以外に分けるような組織は、組織内の権力は、戦って勝ち取るものという考え方が蔓延してしまいます。その結果、チームメンバーの中の個人的野望、政治的駆け引き、不信、恐れ、妬みが発生し、これらの感情が組織の足を大きく引っ張ってしまいます。
これは、トップダウン型で大きくしてきた日本の大企業だけの事例ではなく、世界中のいたるところで起きている問題だとしています。
これに対してティール組織は、目的を定めて、その目的にそって本人が自由にやりたいことをしてもらえば、最大限に成果を出してくれるという考えにもとづいています。一人ひとりのやりたいことの実現を重ねて組織そのものが発達していくことから、発達型組織(Teal organization)と呼んでいます。
ティール組織は、フレデリック・ラルー氏により提唱され、書籍は世界で20万部を売り上げたベストセラー本です。2月に日本でも発売され反響を呼んでいます。出版社の英治出版のサイトには、著者の講演動画(字幕付き)まで掲載されていました。
ロバート・キーガン氏が提唱する発達志向型組織(DDO)
ロバート・キーガン氏はハーバード大学で発達心理学の権威です。ギーガン先生は、著書の中で発達志向型組織(Becoming & Deliberately Develomental Organization=DDO)を提唱しており、この理論もとても話題になっています。著書名が「なぜ弱さを見せあえる組織が強いのか」という大胆かつ斬新なタイトルになっていることもひとつの理由でしょう。
なぜ弱みを見せあえることを求めているのでしょうか?ギーガン先生は、「ほとんどのビジネスパーソンが、自分の弱さを隠す仕事に多大な労力を費やしている」と説明しています。弱さを隠すということに不安を感じ、恐怖を感じ守りに入る、その結果、組織は硬直化し、変化が起きにくくなる・・・。
しかし、ビジネス上の課題を克服する時には、対立や恥辱を遠ざけようとする行動も克服しなければならないシチュエーションがあり、VUCA時代のような変化が大きく不確実性の高い時代には、強靭なトップダウン組織で統率を取った組織運営をするよりは、弱みを見せ合える組織でお互いが信頼し合いながら、人がありのままでいられる場所、ほかの人と結び付ける場所、高い水準に達することができる場所、やりがいを見出せる場所としていく方が効果的、という考え方にもとづいています。
ただし、DDOを成功させるためには、仕事での失敗というものを会社全体で受け入れたり、自分自身の弱点を認めたり、他者の弱点をフィードバックしても立場が危ぶまれない会社のサポートが必要です。弱みや失敗から得られた内省を通じて人が成長するプロセスをサポートする体制・しくみ・企業文化がきちんとしていなければ、DDOは機能しません。
ティール型組織との類似点も多いですが、発達心理学の教授の視点でまとめられたこの書籍も反響を呼んでいます。
管理職不在のホラクラシー型組織
ホラクラシーとはヒエラルキーと対峙する組織の考え方です。ヒエラルキーがトップダウン型・ピラミッド型の組織構造のもとに成立しますが、ホラクラシーには役職がない自由な組織体制で、組織内の役職がありません。人=役職という融合を切り離し、人々は仕事を持つのではなく、多くのきめ細やかな役割を果たそうとする集団であるとしています。ホラクラシー型組織を成功させるためには、個々が自立的であること、なおかつ管理者も役職も不在の中でチームのコンセンサスを作るしくみを作る必要があります。
ホラクラシー型組織に取り組んでいる代表的な存在は、アパレルメーカーのザッポス社で、その動きに全米が注目しています。ザッポスの記事も紹介しておきます。