採用費を抑制して他の人事施策に費用投入したら、結構いろいろできちゃいます
日本経済は2012年頃から、景気好調の期間が長く継続していますが、景気に連動し人財のマーケットでも継続して売り手市場と呼ばれる時代が続いています。この間、中途採用市場が活発になり、転職求人倍率も過去最高を記録し続けています。多くの会社がリソース不足を重大な課題としており、採用にかなりのパワーとコストをかけているという印象を受けています。
その結果、人財紹介会社の売上が向上し規模を拡大しています。また、採用のためのWEBサービスやコンサルティングサービスも好調であり、いたるところでWEB広告を見かけます。実に好調な業界であり、企業による採用への積極投資が続いていることを象徴しています。
そんな採用への積極投資ムードですが、一度冷静に判断し採用だけに投資すべき
かをあらためて考えてみるべきではないでしょうか。
人財確保の目的は、企業を持続的に成長させるためのリソースを確保することです。
人財確保という目的を果たすにあたり、採用費のみにコストを集中させるよりは、社員の育成やエンゲージメント向上に費用投入したほうが、人財の成長・企業の成長の効果が高かったりしないでしょうか?
そこで今日は、採用費のシミュレーションを実施したうえで、採用費の在り方を
考えてみました。
<<前提条件>>
■従業員数 100名
■年間採用人数 10名
■新規採用者の平均年収 5,000千円
■人財紹介会社の紹介手数料 年収×35%
■中途採用者 労働力利益化期間* 3か月間
*OJT等が完了し、一人あたり生み出す利益>人件費となる期間
①10名をすべて人財紹介会社経由で採用した場合
採用単価(エージェントフィー):5,000千円×35%=1,750千円
労働力利益化期間中のコスト:5,000千円×3/12×1.15=1,437千円
合計:(1,750+1,437)千円×10名=31,870千円(1)
このコストを基準として、他のケースで採用した場合を考えてみます
②10名の採用を、1人あたりの採用単価を1,000千円で採用し、入社後に1人500千円分の教育研修費をかけて育成した場合
採用単価 :1,000千円
教育研修費 :500千円
労働力利益化期間中のコスト:5,000千円×3/12×1.15=1,437千円
合計:(1,000+500+1,437)千円×10名=29,370千円(2)
採用単価を抑えた採用とは、人材紹介会社経由の採用の割合を下げ、人材紹介会社にくらべてコストの安いWEB媒体を活用した採用や社員紹介を活用した採用を取り入れることです。年収5,000千円の方の採用であれば、採用単価1,000千円まで下げることはできるのでは、と思います(ただし人材紹介会社を活用するメリットはたくさんあり、活用を否定するものではありせん)。
しかし、教育研修費500千円って、相当充実した研修になりそうですね!しかし(1)と(2)とくらべると約2,500千円の差があり、それだけ研修に投資してもまだコストは安いということのようです。入社後研修を充実させることで、入社後の早期戦力化にもつながりますし、マインドセットにもつながります。また教育研修に限らず、入社後の部署の歓迎会費用を負担したり、入社後一定期間はメンターをつけ、メンターとの会食費用を負担するなどすれば、既存社員のエンゲージメント向上や新規採用者の定着向上にもつなげることができます。採用費抑制の結果、いろいろなことができますね。
③ 退職抑制の施策として1人100千円分の自己啓発費用を負担し、退職による欠員補充を減らして新規採用者を5名に抑えた場合
自己啓発費100千円分を100名分負担:10,000千円
採用単価 :1,000千円
労働力利益化期間中のコスト:1,437千円
5名の採用育成費総額:(1,000+1,437)千円×5名=12,185千円
合計:22,185千円(3)
自己啓発費MAX 100千円分負担って、これもまた充実した教育投資ですね。でもその結果、従業員のエンゲージメント向上につながり、退職の抑制につながったら、採用コストをぐーんと抑えることができてしまいます。10名をエージェントで採用する(1)と(3)を比べるとその差は約9,000千円!自己スキルアップ費用だけでなく、追加で研修を実施したり福利厚生を充実させる費用にも投資できますし、給与や賞与に還元できるかもしれませんね。
今一度、人事にかかるトータルコストの使い方を再考し、企業を持続的に成長させるためのコストの最適配分を検討してみてはいかがでしょうか。