人事評価は運用で決まる!人事部門が取り組むべき運用の3つのポイント
1.はじめに
先日、戦略参謀という本を読みました。
「しきがわ」という同族経営の紳士服店が舞台のフィクション小説ですが、著者は経営コンサルタントであり経営戦略の基礎をあらためて確認する/勉強するのにとても良い本でした。
中でもとても気に入ったのは、人事評価や登用に関して記載した箇所のキーメッセージである「人、性善説なれど性怠惰である」という表現です。
戦略参謀 経営プロフェッショナルの教科書 (日経ビジネス人文庫)
- 作者: 稲田将人
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2017/11/02
- メディア: 文庫
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確かに人の性怠惰により、本来の人事制度の目的と乖離した運用がなされてしまうことがあります。
そして、それが評価の不満につながり・評価者の不信につながってしまいます。そしてだんだんとチームワークが崩れていき、様々な問題が浮上する・・・。
しかし、評価者が最初からみんなの不満を引き起こそうとか、チームワークを乱そうとか、そんな悪意があったわけではなく、きっかけは性怠惰なんですよね。ちょっとした怠惰からはじまるんです。
人事評価を適正に保つには、ちょっとした怠惰を早めにつぶす、これが肝要なのだと思います。
やっぱり性怠惰は表現しやすい言葉ですね(笑)
そこで今日は、この「性怠惰」を防ぎ人事制度を維持するための、「人事制度の運用のあるべき姿」について考えてみます。
2.人事制度を機能させるには、運用をきちんと行うこと
大前提として、人事評価制度に完璧なものは存在しません。どんなに制度が整っていても、運用するのは人です。
人には感情があり、感情に流されます。また、人には承認欲求や防衛欲求が必ずあります。評価の意思決定を行う役職者も、様々な感情と欲求の中で人事評価に取り組んでいます。
当然、冷静に厳格に評価しようとしていますが、時折性怠惰になります。しかし、性怠惰がまかり通ることで、怠惰であることを忘れてしまいます。指摘し咎めなければそれが正当化されてしまいます。
また、制度構築時には想定していなかった様々な問題が発生します。実際にやってみなければわからないことがたくさんあり、不整合が生まれます。また、時代の変化も早く当初の想定が変わることがあります。
このような不整合を把握し、整合性を保ち続けるための微修正を図っていくことが求められていますが、これを放置すると、不整合の中で形式的な運用を継続してしまいます。その結果、制度の目的の形骸化がはじまってしまいます。
人事制度に問題がある会社、従業員からの不満が多い会社は、往々にしてこのような運用の取組みが弱い傾向にあります。人事部門は人の性怠惰によって生じたひずみや不整合と真摯に向き合い、強い信念を持って運用していかなければなりません。
最近、このテーマについて共感できる記事が出ていましたので紹介させていただきます。
3.人事部門が推進すべき、評価制度の運用の3つのポイント
では、人事評価制度担当に求められる運用時のポイントとはどのようなものがあるでしょうか?
つぎの4つにまとめてみました。
①人事評価制度を従業員に定期的に説明し理解を深める
基本的なことですが、これがもっとも重要かもしれません。はい、ちゃんと説明をすることです。制度のHow to的なテクニカルな話ではなく、制度に込められた思い・目的・意義をきちんと発信続けることです。
説明のコンテンツは、人事部門が作るべきですが、発信はうまく使い分けるべきでしょう。会社の代表者が人事権を持つ場合は代表者から、人事部門が会社の代表者の伝達発信を任されているならば人事部門より行うべきです。
ある程度大きな組織で、組織の階層が明確な場合は、経営や人事部門からの説明だけでなく部門長が主体的に説明できるようにすることも重要です。ただしその場合は、部門長のアカウンタビリティ(説明責任)を求め、そのためのサポートすることが重要です。
なぜならば、人事部門だけが全社員の理解・浸透を図るには限界があるからです。部門長の主体性を尊重すると同時にアカウンタビリティを求めることで、部門長が自分事として評価を捉え、その下のラインマネジャーに伝え、意識徹底の連鎖を図ることにつながります。
②評価フィードバックの「手続き」を継続させる
評価制度の問題の多くは、評価を受ける側の「納得感の欠如」から生じます。
納得感が得られない要因には2種類あります。ひとつは「自身がやったことが認められていない」ことです。評価者から丁寧なフィードバックが必要であり、一定のマネジメントスキルと経験が欠かせません。
しかし、ひとつめの理由よりもずっと多いのは、「評価フィードバックの手続きが不十分である」ことです。評価フィードバック時に理由を説明しないことや、もっと悪いのはフィードバックすら行わないなどの行為により引き起こされます。
この状態は絶対に放置してはいけません。重要なのは、評価を伝える「手続き」なのです。手続きには、マネジメントスキルは不要です。しかし手続きを継続的に行うことがなかなか難しいのです。
そこで人事部門は、評価の手続きが継続できる環境を作るために、一例として次のようなことをしくみとして運用する必要があります。
・評価者(一次評価者、二次評価者、フィードバック者等)は明確に定める
・評価の手続きを受けた記録を残
・現業部門の負担や理解しやすさを考慮し、手続きはシンプルなものにする
③制度のPDCAをちゃんと回す
人事部門は、制度運用時に発生した様々な事実を、定量的・定性的に把握しその情報をまとめて経営者に報告をしたり、部門長と共有して意見交換をすることが必要です。
そのためには、例えば賞与支給業務を終えた段階で、一連の評価~賞与決定までの内容を総括して評価割合・賞与支給額の考察を行うことや、評価・賞与決定の会議で発生した経営や役職者からの問題提起、部門長との会話の中での質問内容を踏まえた制度の分かりにくさを把握し、その記録を取り、次の評価・賞与時には問題の解決を図るといった取り組みが必要となります。
前述したとおり、制度には当初想定していなかったことや、周囲の環境変化とともに合わなくなることが発生します。その事実を把握し常に改善し続けることが重要です。
人事部門で評価制度を担当する方の少しでも参考になれば幸いです。