人事のいろんなこと・・・

人事部門のマネジメントをしています。日ごろ考えたこと、印象に残った本などを紹介していきます。

エンジニア採用を成功させる (エージェント紹介を成功させる)

エンジニアの採用ができるリクルーターが重宝されています。どの会社も、エンジニア採用にとても苦労しているようですね。今回からシリーズ化して、エンジニア採用について書きます。

 1.エンジニアの転職求人倍率

 

リクルートキャリア社が発表した2017年11月時の転職求人倍率によると、全職種における倍率が1.90倍と、過去4年間で最も最大の数値となっているのに対し、ITエンジニア職全体で3.95倍と、こちらも過去最大級の倍率となっています。特にインターネット関連の求人倍率が6.12倍と突出して高い数値・・・これだけ市場が活況だと、エンジニア採用はどの会社も苦しいはず。

www.recruitcareer.co.jp

 

ということで、何回かに分けてエンジニア採用をうまくいかせる方法を紹介していきます。今回は、エージェント経由の採用について紹介します。

 

2.エージェント経由でのエンジニア採用のポイント

 

 ①エージェント会社の好感度/優先度を上げる

月並みかもしれませんが、とても大切なことです。
エージェントの営業担当は、一度に数十社を担当しています。すべての会社と平等に付き合うのには限界があるので、優先順位をつけています。当然のことながら採用してくれる会社は優先順位が高いです。ですが、これと同じくらい大切なのが、好きな会社・好きな担当者かどうかです。この会社のために貢献したい、この人の期待に応えたい、そう思ってもらえる様、採用担当は日々のコミュニケーションを丁寧に行う必要があります

好感度/優先度を上げる方法の一例をあげておきます。相互にリスペクトしていれば、そんなに難しいことではないんですよね。

・求人内容の説明、候補者の合否結果のフィードバックを懇切丁寧に行う

・エージェントからの要望には、手間がかかってでも極力応える

・定期的にコミュニケーションするしくみを作る(週1回の電話ミーティング)

・お互いを知るコミュニケーションや機会を作る(親睦会など)

また、エージェント会社にお邪魔して、会社紹介や求人紹介のための説明会を開催するのもとても有効です。現場のHiriring Managerを同行させるともっと効果的です。

 

もっともやってはいけないことは、紹介の数が少ない/質が低い等を理由に、エージェント担当にダメ出しをすることです。紹介が少なければ担当者を変える、とか絶対に言ってはいけません。次第に足が遠のき、疎遠になってしまいます。自分の成功をサポートしてくれる真のビジネスパートナーとしてお付き合いすべきです。

 

②スピードで勝つ

競争が激しい時代、採用はスピード勝負です。最終面接の一歩手前までは、とにかくスピード勝負しましょう。例えば書類選考は24時間以内回答とか、目標を決めるとよいです。 スピードが速い会社から順番に優先順位をつけますが、スピードで負けると日程調整が難航しそのまま辞退という結果につながってしまいます。

また、スピード良く面接の日程が組める様に、オペレーションを工夫しましょう。ピンポイントの候補日をぶつけて候補者の日程を待つやり方よりは、候補者の希望日に合わせるやり方の方がスムーズです。様々な日程希望にリニアに応えられる様、面接官を複数設けておくことも重要です。

ただし、最終面接以降については、戦略的な視点で考えましょう。トップバッターでオファーを出すことが有効な場合と、最後に出すことが有効の場合の両方ともあります。その時の状況を捉え、最善の方法を採用する必要があります。

 

③できるだけ会う そう簡単にNGにしない

エージェント担当は、どの会社が通りやすくてどの会社が通りにくいか、肌感覚で分かっています。そして候補者には、できるだけ選考の通過する会社を推薦する傾向にあります。求人票とのミスマッチがない限り、書類で落とさずに出来るだけ面接をするのがよいです。また、最終が社長面接とかでもない限り、できるだけ最終面接にパスできるしくみにしておくとよいでしょう。

あまりに厳しい選考基準を設けていると、「どうせ推薦しても落とされそう」という心情が働き、推薦数の低下につながります。カジュアル面談の希望などにも対応しながら、できるだけ多くの候補者と会うことが有効です。

 

④エージェントフィー(紹介手数料)を上げる

この数年間のエンジニア採用は、エージェントフィーが高騰しています。年収×35%は最低ライン、中には年収×100%で採用する会社もあります。高いお金をかけてでも人を調達したいIT会社が多数存在しています。

エージェント会社の傾向として、フィーの高い会社へ優先的に紹介する傾向があります。これも当然っちゃ当然です。採用担当者は、コストも睨みながら自社の採用成功においての有効性を考え、選択肢のひとつとして検討しておくべきでしょう。

 

少しでもお役に立てる内容でしたら嬉しいです。

人事企画での過去の成功体験 10年経てば意味がない

既存の人事制度を抜本的に見直しし新しい制度に置き換えるようなプロジェクト、よく耳にします。大企業だと大体、10年~15年サイクルくらいで制度大改定を行っているような感覚です。
私も2007年ごろから2~3年かけて、人事制度改定を担当者として経験しましたが、10年経った今、当時の成功体験を一旦リセットしようかと思い始めています。今日はこのことについて書いてみました。


1990年代~2000年代に、多くの企業が目標管理制度を導入しました。当時の制度の特徴は、個々の目標達成度は数値で点数を算出し、その合計点を一人ひとり比較し、最後は相対評価で序列を決める制度が主流でした。しかしこの制度には問題があり、テクニック次第で点数を高くすることができる制度になってしまいました。目標達成度得点を高くしようとして目標のレベルを下げたり、目標を達成しやすい内容で設定したり、この動きを抑制することが出来ず、成果主義が機能しない傾向が見られました。このことを取り上げた、富士通の暴露本はベストセラーにもなりました。

私が制度改定を担っていた2007年頃は、目標管理制度の問題点を改善するしくみを導入し始めている企業が多く存在しました。私もそのような事例を研究し、当時の会社でリニューアルした目標管理制度を導入しました。その時は一生懸命仕事し、一生懸命考えたので、今でも良い思い出になり、自分が人事のビジネスパーソンとして最も成長したフェーズでもありました。


この時の考えたことが今でも脳裏に焼き付いており、自分が実現した制度改定が最も新しい人事制度である、一旦そのように考えると、いつまでも最新の制度のまま維持されてしまいます。


今、シリコンバレーの企業を中心に、人事評価を廃止する会社が出始めました。
半期や一年などのサイクルで人事評価し序列を決めるというやり方がそぐわなくなっているようで、頻繁なコミュニケーションを通じたフィードバックの方がスピードが求められる経営環境においては有効という考え方が少しずつ広がってきています。また、多様な働き方・価値観を尊重する時代においては、通り一遍の人事評価指標でフィードバックをすること自体が難しくなっていると(むしろナンセンスとも)言われています。

人事のトレンドは少しずつ変化していて、10年も経つとがらっと変わっています。過去の成功体験に酔いしれていては時代遅れになってしまいます。うまくいったこと・考えたことに対する固定観念をなるべく排除し、常に時代のニーズやトレンドにアンテナを張り続けるはとても重要だと感じています。

新卒採用目標を減らす前に、考えてほしいこと

5月も後半に入ろうとしています。新卒採用活動、皆さんの会社はいかがでしょうか。

この時期ともなれば、採用目標が達成できるかどうか、そろそろ見え始めるころです。苦戦している会社の場合「いっそのこと採用目標を減らしてしまおう、そうしないと自社の求めるスペックに合わないし」と考える企業は少なくありません。

でもちょっと待って考えてみてください。新卒採用数を減らした場合、どのような影響があるのでしょうか?
私は以前在籍していた会社で、新卒採用数を大幅に減らした年の3年後の姿を見たことがあります。その時は次のような影響がありました。

 

1.新人が配属されない部署が出てくる

言われてみれば当たり前の話です。なんだそれだけか、そう思うかもしれません。
しかし、最も下っ端のメンバーにとっては、結構大きな問題です。
誰かに仕事を引継ぎすることで、より一段上の新しい仕事にチャレンジできるように
なる、この繰り返しで人は成長していきます。
しかし、より一段上の仕事にチャレンジする機会が先送りになってしまいます
組織には、下っ端特有の仕事というのが必ず存在します。それを引き継げないのは
結構苦しいです。

 

2.〇年後のリソースが不足する

採用数を減らした時点の会社業績は低迷していたが、その後回復し業績も好調になった、この勢いに乗じてたくさん案件を獲得したい!そのようなチャンスが来たタイミング、絶対ものにしたいですよね。
しかし、採用数を減らしたことでリソース不足が生じます。問題はリソース不足が同一年代に偏るため、どこの部署でも共通した層のリソース不足が生じます。さらに外部調達(中途採用等)をしようと思うと、同一レベル層を複数補充する必要があるため、時間も労力もかかってしまいます。

 

3.〇年後、ストレッチすぎる仕事をアサインされる

これは上記の「2」に関連して起きることですが、採用数が少なく稀少価値が高いため、その年代が引っ張りだこになります。これは、その年代にとっては大きなチャンスでもありますので、決して悪いことではありません。
しかし、これがチャンスであると同時に負荷もかかります。複数のプロジェクトを掛け持ちしたり、お客さんの数が多くなったり・・・。その年代よりも下の世代は採用数を増加させている場合が多いのですが、その年代に育成の負荷もかかっていたりします。結果、ストレッチすぎる仕事をアサインされてしまい、潰れてしまう場合があります。会社がきちんとケアをしなければならなくなります。

 

新卒採用を減らすことで、入社後の会社の体制への影響が生じます。それが厄介なことに、〇年後など、後の時代に影響が出てしまい、結構大きな問題になる場合もあります。目先の採用目標数を減らして楽をする前に、将来の会社のこともよく考えてみてはいかがでしょうか。

取引先と人事担当のリレーションについて

先日、人材紹介会社の大手企業で当社の営業担当者と、同じ会社で前職時代に営業担当だった方と3人で会食をしました。

その中で印象的だったのは、「ちょっと会話しただけで、企業の人事担当がやる気があるのかないのか、すぐわかる」とのこと。
そしてやる気がある担当者に対しては、成功を後押ししてあげたいと思うので積極的に情報提供するようなるし、自分の営業成績のことはあまり関係なく一生懸命やりたいと思うとのこと。

私は日ごろ、20社以上の人材紹介会社とお付き合いしており、それぞれの会社の担当者の顔もわかります。積極性・担当者の能力・スピード・・・本当に様々なので、20社以上と平等に付き合うことはなく、かなり偏りがあります。

ただし、どの会社にも共通している自分のスタンスがあります。それは「この会社(もしくは私)とお付き合いしたら、きっと面白いことがありそう」って思ってもらうことです。それは様々な情報を提供することだけでなく、相手がほしいと思っている情報をタイムリーに提供すること、取引先とは思わず相手の意見に真摯に耳を傾けることetc、相手が喜んでもらえることをどんどんやることです。

その結果、全ての会社の方ではありませんが、わりと多くの取引先の皆さんと良いお付き合いが出来ているのでは?と思っています。「やる気のある人」って思ってもらえているような気がします。

人事の仕事は、お客様はいません。その代わり、取引先企業の支援を受けることが多いです。取引先企業をどのように動かしていくかは、結構大事だったりします。そのためには、「この会社(や自分)とお付き合いしたらきっと面白い」って思ってもらうための、「営業活動」が必要だと思います。

 

タレント・アクイジションとは

最近、人材採用のミッションが変化し、「リクルーティング」ではなく「タレント・アクイジション」が求められているようです。

タレント・アクイジションとは、どのようなものでしょうか?
リクルーティングとタレント・アクイジションの違いを記事にしたブログを見つけましたので紹介します。 

www.procommit.co.jp

 

ブログから抜粋すると、「タレント・アクイジション」とは、自社が採用したいタレントを定義して採用ブランドを構築し、タレントを惹きつけタレント獲得後の活躍をサポートすること、としています。

一方、リクルーティングとは、事業本部が定めた求める人材ニーズに沿って採用活動をすることに限定しており、タレント・アクイジションはリクルーティングの発展形で、リクルーティングよりも広範囲のものとしています。


まだまだリクルーティングに留まっている会社が多いですよね・・。


次に、採用チームがタレント・アクイジションチームになるために、必要な5項目を挙げてみます。

1.自社の業務内容を理解したり、自社の組織的な課題を把握すること(社内情報に精通すること)

2.会社の将来計画をもとに、数年後に必要なタレント・ポートフォリオを設計し、中期採用KPIを立てること

3.中期採用計画実現のための採用マーケティングを行い、採用戦略とアクションプランを立案すること

4.採用戦略もとに、ブランディングやプロモーションを行うこと。

5.採用ブランド・プロモーションによって人材を惹きつけ、採用に導くこと

 

タレント・アクイジションの考え方をいち早く取り入れた会社こそが、タレント獲得に成功する時代が来ています。

通年採用が新卒採用の主流になる!?

1月20日(金)、6社の採用担当者が集まる取材に呼ばれて参加してきました。その時、複数の会社の方の担当者の方が「新卒一括採用ってそのうちなくなるよね」といったことを話していました。今日はこのテーマで考えてみたいと思います。

 

新卒一括採用を巡ってはここ5年以内に様々な議論と変更がなされ、その都度就活生と人事担当者が戸惑いながら対応に追われていますね。

ひとつの例として、インターンシップの在り方が変わり、短期間のインターンシップ(1Dayインターンシップ等)が流行りつつあります。でもその内容は会社説明会そのものであるなど、就活解禁前の学生集めの手段として利用されており、従来のインターンシップとは大分様変わりしています。

 

一方、アメリカの場合、新卒一括採用というものは存在しません。採用時期に制約はなく基本は「通年採用」であり、就業経験がなくても中途採用と同じように経験や専門性を問う採用をしているようです。そのため、大学生は学生時代に勉強をしっかりやり専門性を身に付けることや、休みの期間中はインターンシップに参加して就業経験を積むなど、就職に向けてきちんと努力しなければなりません。

また、インターンシップが学生と企業をつなぐチャネルとなっており、参加学生で優秀だったりすると、そのまま就職するケースも多いとか・・・。

gaishishukatsu.com

 

さて、日本企業に話を戻しますが、最近の動向を見ていると、日本でも通年採用をやり始めている企業が増えているようです。有名な企業として、ファストリYahoo!楽天ソフトバンクGMOが挙げられます。

[ニュース]2017年度新卒採用より「通年ポテンシャル採用」を導入~入社... - 『日本の人事部』


ここで、通年採用の目的について考えてみます。
通年採用の目的は、以下の3つである場合が多いようです。

◆通年採用の主な目的
①3月卒業ではない大学に在学中の優秀な学生を集めること
②学生時代の会社選びがうまくいかず、入社間もなく転職を考えている優秀な学生を集めること
③優秀な大学生を、他社よりも早く接触し獲得すること
(いずれかまたは複数に該当するケースが多い)

では、新卒一括採用の目的とは何でしょうか。
◆新卒一括採用の主な目的
採用シーズンの学生の動きを的確に捉え、必要なプロモーションを行い、優秀な大学生を獲得すること

もしも、通年採用が主流になり、採用シーズンを待たずに優秀な学生が内定をもらうのが当たり前になれば・・・新卒一括採用では優秀な学生を獲得しにくくなってしまいますね。
ですが、通年採用での早期獲得が過剰となれば、もしかすると通年採用を規制する倫理憲章が出されるかもしれません。でも、就職するためには大学4年生にならないと就職活動が出来ない国ってなんかおかしいですよね。規制が機能するとはあまり考えられないですし、もし機能したらどんどんグローバル社会から蚊帳の外になってしまい、それはそれでもっと心配です。

そのように考えると、通年採用は新卒一括採用の在り方を変える可能性があると思います。むしろ既に、通年採用的発想で優秀な学生をかなり早期に獲得出来ている会社もあるのでは?通年採用を早期に取り入れ、通年採用のプロモーションに向けた施策を実行していくこと、この数年間の新卒採用担当の大きなテーマになると思います。 

 

チームが成功するために必要な要素

新卒入社した大手の伝統企業では、絶対的なリーダーがいて、そのリーダーの指示に従っていれば、安心して仕事ができる環境がありました。そして私も、指示にきちんと答えていくことが最大のミッションという理解の下で仕事をしておりました。
時にはリーダーの指示が不明確だったり意見が合わなかったりすることはよくありましたが、そういう時でもリーダーという立場を尊重しリスペクトを忘れないようにしながらディスカッションをしていたように思えます。

 

しかしその後成長企業に転職し、すべてのメンバーが転職経験者という環境となり、そこで自分がリーダーを務めるようになるとそう簡単にはいかないのです。自分と同じようなカルチャーにいたメンバーなんて、そんなに多くないのです。

ダイバーシティ化やグローバル化の波が押し寄せており、伝統企業にいるリーダーも、これまで経験したことがないような新たな課題に直面しているように思えます。メンバーの価値観が多様化し、住んでいるところも言語もバラバラだったりして、昔のやり方ではリーダーシップを発揮できないことがが増えつつあるのではないでしょうか。

そのようなことを悩んでいたら、先日発売されたハーバードビジネスレビューの「チームの力」特集が出ていたので、購入して読んでみました。

 

www.dhbr.net

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この号では、米国ペンシルベニア大学の准教授らの記事が掲載されていましたが、チームが成功する条件として、次のような要素があることが大切だとのことです。


◆絶対的な方向性
チームに、明確で挑戦しがいがあり(だが不可能ではない)、達成に意義を見出せるような共通目標があるか

◆協力な構造
メンバーの人数と構成は適切か、メンバーがタスクの開始から終了まで責任を追っているか、許容されるふるまいを定めた明確な規範があるか

 

◆支えとなるコンテキスト

必要なリソース、情報、研修が得られているか、適切な成功報酬が用意されているか

◆共通の思考様式
メンバーが共通のアイデンティティを持っているか、メンバーが進んで情報を共有して相手の制約事項やコンテキストを理解しているか

これを見てみると、目新しいものはあまりなく、リーダーシップの教科書で書かれていて目に通したことがある内容が多く存在するように思えます。
特に一番最初の項目の「目標設定」というのは非常に重要であり、マネジメントやリーダーシップの研究者の多くがその重要性を唱えていますし、その研究者の権威でもドラッカーも著書「マネジメント(基本と原則)」で言及しており、マネージャーの仕事の1項目目が「目標を設定すること」としています。

 

この記事ではチームが複雑化しても、チームが成功されるために必要な要素は普遍な部分も多いとも書いていました。普遍的な部分に再度立ち返って再度勉強してみるのもひとつかもしれません。