人事のいろんなこと・・・

人事部門のマネジメントをしています。日ごろ考えたこと、印象に残った本などを紹介していきます。

ノーレイティングスが今、注目される理由とは?

f:id:happy--human:20180909123548j:plain

 

はじめに

 

ノーレイティングスという評価方法が注目されるようになりおおよそ5年といったところでしょうか・・・。人事制度に携わる人事担当者ならば、知っている人が多くなってきました。

 

2017年4月のHarvard Business Reviewは、「人材育成」が特集され、人事評価のトレンドとしてノーレイティングスを導入すべきか否か、の特集がありました。この記事では、GEやMSのようにノーレイティングスを推奨する企業がある一方で、Facebookのように評価ランクの必要性を提唱する企業も残っており、シリコンバレーの企業のすべてがノーレイティングスに向かっているわけではない、という客観的立場で構成された興味深い特集記事でした。どちらも論理性の高い主張が特集されていました。

www.dhbr.net

また、人事系の専門誌である「労政時報」は度々、人事制度の導入事例を特集記事にしています。硬派な雑誌でありますが、2018年7月の労政時報ではじめて、ノーレイティングス導入企業の事例が特集されました。


ネット上でも雑誌でも次第に注目を高めるノーレイティングス。
人事担当者はノーレイティングスを理解し、自社に導入したと仮定した場合のPros/Consを検討すべき時期になっていますね。
そこで今回は、ノーレイティングスがなぜ注目されているか、について解説していきます。


■ノーレイティングスとは何かがわからない方は、こちらのサイトに詳しく解説がありますbizhint.jp


ノーレイティングスが注目されている理由


(1)そもそも個人の成果を定量的に図ること自体に無理があった

 成果主義による人事制度が一般的なものとして確立した2000年前後になると、公正性・公平性の観点から問題点がいくつか浮かび上がります。その後は、論理的な整合性を高めていくようなきめ細やかな人事制度が開発されるようになりました。

 

その一例が、目標の点数化をより精緻にして業績評価を行い、賞与等に反映するデジタル型の目標管理制度です。目標達成基準を定量的に測れるようにした目標を期首に設定し、期末にはその得点をつけ、合計得点の大きさをそのままもしくは一部他の指標を加えて、業績評価に反映するしくみです。
簡単な目標ばかりを並べて達成したとならないように、評価がより整合性のあるものにするために、目標にウェイトを設定したり、目標の難易度を設定したりと、より一層制度が複雑なものになった制度もあります。
より専門的で盲点が少なそうな制度が多くの会社で取り入れられました。

 

しかし実際にはうまくいきませんでした。すべての目標を定量化しすぎるあまり、強引だったり意味のない達成基準になってしまい、目標を立てる側も違和感のある目標管理制度になることがたくさんありました。

また、いくら定量化をしても、最終的な評価を決める際には他の要素が加わり、目標達成度だけで処遇を決める業績評価が決まるという運用にはなりませんでした。
期首に定めた目標だけを達成しても、期中で目標が変わったり、新しいミッションが課せられたりするので、目標達成度以外の要素が加わるのは自然な流れでもありました。

 

2000年代後半頃になると、目標達成度の評価(点数)と、処遇を決める業績評価を切り離して運用する制度が増えてきました。その結果、得点の横並びで全体的な評価を決められなくなったため、評価者の説明責任が求められるようになりました。説明責任を果たすためには、マネジメント力や日頃の信頼関係が必要ですが、きちんとマネージャーを教育していないと機能しませんでした。その結果、被評価者のモチベーションを高めるための人事評価であるにもかかわらず、逆に下げる結果につながることが多く発生しました。

 

そんな問題の多い人事評価・・・。時間をかけてやっているが、逆に悪い原因を作っているのでは?そもそも評価なんかないほうがいいんじゃないか?
このような背景もあり、ノーレイティングスは画期的な考え方として注目されるようになりました。


(2)恣意的な評価が発生し、評価制度の不信感が解消しない

決してあってはいけないことなのに、どの会社でもあるのが「評価を好き嫌いで決めること」です。


好き嫌いによる評価を防止するためには、人事評価の担当部門がかなり頑張らないと減らないです。たとえば、評価実施前にはきちんと評価者に通達し、評価者向けの研修を定期的に実施し、評価者会議で不整合を指摘し評価オペレーション終了後にきちんと振り返りを行う・・・などなど。


こういうことをきちんとやっていると、評価者の中で「好き嫌いで決めちゃいけないんだな」という意識が自然に醸成していき、ちゃんと評価が機能するようになります。
これは前回のブログでも紹介しましたが、人事評価で重要なのはやはり運用です。

人事評価は運用で決まる!人事部門が取り組むべき運用の3つのポイント - 人事のいろんなこと・・・

 

残念ながら一度恣意的な評価が行われると、運用だけでなく、しくみ自体に問題があると思われがちです。人事評価制度を変えるべきではないか、最近はどのような評価制度が主流なのか。そんなことを考えている中で、今までの常識を覆すようなしくみがアメリカからやってきている・・・。

これもまた、ノーレイティングスへの関心を引き寄せるポイントになっているものと思われます。

 

(3)仕事の複雑化とメンバーの多様化

評価を決めるためには、評価者である上司が被評価者である部下の仕事ぶりについて、評価できるだけの情報を持っているということです。ところが、VUCAと呼ばれる今日のビジネスの現場では、リーダー自身も予測不可能なことが多く、旧来のようにリーダーに集中していた権限や意思決定にばかり委ねていては、競争に打ち勝つことができなくなっています。


このような背景もあり現在では、意思決定の権限をリーダーに集中させるよりは、メンバー一人ひとりがそれぞれの担当領域で成果を出し、互いのメンバーで意見を出し合いながら成果を高めていくチームを作ることがリーダーの仕事であり、そのほうが成功可能性が高まるといった考え方に変わりつつあります。

VUCA時代のリーダーの役割 ~その1 リーダーの役割が変化している背景は?~ - 人事のいろんなこと・・・

  

新しい時代のリーダーの役割では、リーダーがするマネジメントよりは、様々な環境変化にいち早く対応して能動的に意思決定を行うメンバーの育成と、そのメンバーをサポートするリーダーシップが求められます。すべての仕事の進捗を把握することよりは、仕事が進捗するようにサポートすることが期待されているということなのです。

 

この期待役割の下では、すべての仕事の成果管理することには限界があります。つまり、日頃から部下を観察して人事考課を行う、という成果主義の前提自体が限界をむかえています。また、1年や半年という決められたサイクルの中で評価することもどんどんそぐわなくなってきており、画一的な評価制度をすべての社員に適用することが非現実的なものになっています。

 

また、最近では育児や介護を抱えた社員が職場にいるケースが増えてきました。外国人の社員も増えており、働く時間や価値観が多様化しています。それだけでなく、実現したいキャリア感も多様化しており、昇進やポストを動機づけ材料にしても、全員が響くものではなくなってきているばかりか、むしろ時代錯誤で逆効果と捉えられかねません。良い評価であれば、早く等級が上がり、早く出世する、そのような方法だけでは
チームのメンバーを引っ張ることができない時代になっているのです。


以上をまとめると、成果主義型人事制度は、その構築や運用をめぐり、約20年間様々な試行錯誤と改定がなされました。なかなか解決する方法が見つからなかったこと、時代のニーズが大きく変わってきていることもあり、ノーレイティングスへの関心が
高まっているのではないでしょうか。

人事評価は運用で決まる!人事部門が取り組むべき運用の3つのポイント

f:id:happy--human:20180728183045j:plain

 

1.はじめに

先日、戦略参謀という本を読みました。

 

「しきがわ」という同族経営の紳士服店が舞台のフィクション小説ですが、著者は経営コンサルタントであり経営戦略の基礎をあらためて確認する/勉強するのにとても良い本でした。

中でもとても気に入ったのは、人事評価や登用に関して記載した箇所のキーメッセージである「人、性善説なれど性怠惰である」という表現です。

 

 

確かに人の性怠惰により、本来の人事制度の目的と乖離した運用がなされてしまうことがあります。

そして、それが評価の不満につながり・評価者の不信につながってしまいます。そしてだんだんとチームワークが崩れていき、様々な問題が浮上する・・・。

 

しかし、評価者が最初からみんなの不満を引き起こそうとか、チームワークを乱そうとか、そんな悪意があったわけではなく、きっかけは性怠惰なんですよね。ちょっとした怠惰からはじまるんです。

人事評価を適正に保つには、ちょっとした怠惰を早めにつぶす、これが肝要なのだと思います。

 

やっぱり性怠惰は表現しやすい言葉ですね(笑)

 

そこで今日は、この「性怠惰」を防ぎ人事制度を維持するための、「人事制度の運用のあるべき姿」について考えてみます。

 

2.人事制度を機能させるには、運用をきちんと行うこと

 

大前提として、人事評価制度に完璧なものは存在しません。どんなに制度が整っていても、運用するのは人です。

人には感情があり、感情に流されます。また、人には承認欲求や防衛欲求が必ずあります。評価の意思決定を行う役職者も、様々な感情と欲求の中で人事評価に取り組んでいます。

 

当然、冷静に厳格に評価しようとしていますが、時折性怠惰になります。しかし、性怠惰がまかり通ることで、怠惰であることを忘れてしまいます。指摘し咎めなければそれが正当化されてしまいます。

 

また、制度構築時には想定していなかった様々な問題が発生します。実際にやってみなければわからないことがたくさんあり、不整合が生まれます。また、時代の変化も早く当初の想定が変わることがあります。

 

このような不整合を把握し、整合性を保ち続けるための微修正を図っていくことが求められていますが、これを放置すると、不整合の中で形式的な運用を継続してしまいます。その結果、制度の目的の形骸化がはじまってしまいます。

 

人事制度に問題がある会社、従業員からの不満が多い会社は、往々にしてこのような運用の取組みが弱い傾向にあります。人事部門は人の性怠惰によって生じたひずみや不整合と真摯に向き合い、強い信念を持って運用していかなければなりません。

 

最近、このテーマについて共感できる記事が出ていましたので紹介させていただきます。

forbesjapan.com

 
3.人事部門が推進すべき、評価制度の運用の3つのポイント

では、人事評価制度担当に求められる運用時のポイントとはどのようなものがあるでしょうか?

つぎの4つにまとめてみました。

①人事評価制度を従業員に定期的に説明し理解を深める

基本的なことですが、これがもっとも重要かもしれません。はい、ちゃんと説明をすることです。制度のHow to的なテクニカルな話ではなく、制度に込められた思い・目的・意義をきちんと発信続けることです。

 

説明のコンテンツは、人事部門が作るべきですが、発信はうまく使い分けるべきでしょう。会社の代表者が人事権を持つ場合は代表者から、人事部門が会社の代表者の伝達発信を任されているならば人事部門より行うべきです。

 

ある程度大きな組織で、組織の階層が明確な場合は、経営や人事部門からの説明だけでなく部門長が主体的に説明できるようにすることも重要です。ただしその場合は、部門長のアカウンタビリティ(説明責任)を求め、そのためのサポートすることが重要です。

なぜならば、人事部門だけが全社員の理解・浸透を図るには限界があるからです。部門長の主体性を尊重すると同時にアカウンタビリティを求めることで、部門長が自分事として評価を捉え、その下のラインマネジャーに伝え、意識徹底の連鎖を図ることにつながります。

 

②評価フィードバックの「手続き」を継続させる

 

評価制度の問題の多くは、評価を受ける側の「納得感の欠如」から生じます。

 

納得感が得られない要因には2種類あります。ひとつは「自身がやったことが認められていない」ことです。評価者から丁寧なフィードバックが必要であり、一定のマネジメントスキルと経験が欠かせません。

 

しかし、ひとつめの理由よりもずっと多いのは、「評価フィードバックの手続きが不十分である」ことです。評価フィードバック時に理由を説明しないことや、もっと悪いのはフィードバックすら行わないなどの行為により引き起こされます。

 

この状態は絶対に放置してはいけません。重要なのは、評価を伝える「手続き」なのです。手続きには、マネジメントスキルは不要です。しかし手続きを継続的に行うことがなかなか難しいのです。

 

そこで人事部門は、評価の手続きが継続できる環境を作るために、一例として次のようなことをしくみとして運用する必要があります。

 

・評価者(一次評価者、二次評価者、フィードバック者等)は明確に定める

・評価の手続きを受けた記録を残

現業部門の負担や理解しやすさを考慮し、手続きはシンプルなものにする


③制度のPDCAをちゃんと回す

人事部門は、制度運用時に発生した様々な事実を、定量的・定性的に把握しその情報をまとめて経営者に報告をしたり、部門長と共有して意見交換をすることが必要です。

 

そのためには、例えば賞与支給業務を終えた段階で、一連の評価~賞与決定までの内容を総括して評価割合・賞与支給額の考察を行うことや、評価・賞与決定の会議で発生した経営や役職者からの問題提起、部門長との会話の中での質問内容を踏まえた制度の分かりにくさを把握し、その記録を取り、次の評価・賞与時には問題の解決を図るといった取り組みが必要となります。

 

前述したとおり、制度には当初想定していなかったことや、周囲の環境変化とともに合わなくなることが発生します。その事実を把握し常に改善し続けることが重要です。

 


人事部門で評価制度を担当する方の少しでも参考になれば幸いです。

採用費を抑制して他の人事施策に費用投入したら、結構いろいろできちゃいます

 日本経済は2012年頃から、景気好調の期間が長く継続していますが、景気に連動し人財のマーケットでも継続して売り手市場と呼ばれる時代が続いています。この間、中途採用市場が活発になり、転職求人倍率も過去最高を記録し続けています。多くの会社がリソース不足を重大な課題としており、採用にかなりのパワーとコストをかけているという印象を受けています。

 その結果、人財紹介会社の売上が向上し規模を拡大しています。また、採用のためのWEBサービスコンサルティングサービスも好調であり、いたるところでWEB広告を見かけます。実に好調な業界であり、企業による採用への積極投資が続いていることを象徴しています。

 

そんな採用への積極投資ムードですが、一度冷静に判断し採用だけに投資すべき
かをあらためて考えてみるべきではないでしょうか。
人財確保の目的は、企業を持続的に成長させるためのリソースを確保することです
人財確保という目的を果たすにあたり、採用費のみにコストを集中させるよりは、社員の育成やエンゲージメント向上に費用投入したほうが、人財の成長・企業の成長の効果が高かったりしないでしょうか?

そこで今日は、採用費のシミュレーションを実施したうえで、採用費の在り方を
考えてみました。

 

<<前提条件>>
■従業員数   100名
■年間採用人数 10名
■新規採用者の平均年収 5,000千円
■人財紹介会社の紹介手数料 年収×35%
中途採用者 労働力利益化期間* 3か月間
 *OJT等が完了し、一人あたり生み出す利益>人件費となる期間


①10名をすべて人財紹介会社経由で採用した場合
 
 採用単価(エージェントフィー):5,000千円×35%=1,750千円
 労働力利益化期間中のコスト:5,000千円×3/12×1.15=1,437千円
 合計:(1,750+1,437)千円×10名=31,870千円(1)

 このコストを基準として、他のケースで採用した場合を考えてみます

10名の採用を、1人あたりの採用単価を1,000千円で採用し、入社後に1人500千円分の教育研修費をかけて育成した場合

 採用単価     :1,000千円
 教育研修費    :500千円 
 労働力利益化期間中のコスト:5,000千円×3/12×1.15=1,437千円
 合計:(1,000+500+1,437)千円×10名=29,370千円(2)

採用単価を抑えた採用とは、人材紹介会社経由の採用の割合を下げ、人材紹介会社にくらべてコストの安いWEB媒体を活用した採用や社員紹介を活用した採用を取り入れることです。年収5,000千円の方の採用であれば、採用単価1,000千円まで下げることはできるのでは、と思います(ただし人材紹介会社を活用するメリットはたくさんあり、活用を否定するものではありせん)。 

しかし、教育研修費500千円って、相当充実した研修になりそうですね!しかし(1)と(2)とくらべると約2,500千円の差があり、それだけ研修に投資してもまだコストは安いということのようです。入社後研修を充実させることで、入社後の早期戦力化にもつながりますし、マインドセットにもつながります。また教育研修に限らず、入社後の部署の歓迎会費用を負担したり、入社後一定期間はメンターをつけ、メンターとの会食費用を負担するなどすれば、既存社員のエンゲージメント向上や新規採用者の定着向上にもつなげることができます。採用費抑制の結果、いろいろなことができますね。


③ 退職抑制の施策として1人100千円分の自己啓発費用を負担し、退職による欠員補充を減らして新規採用者を5名に抑えた場合

 自己啓発費100千円分を100名分負担10,000千円
 採用単価    :1,000千円
 労働力利益化期間中のコスト1,437千円
 5名の採用育成費総額:(1,000+1,437)千円×5名=12,185千円
 合計22,185千円(3)


自己啓発費MAX 100千円分負担って、これもまた充実した教育投資ですね。でもその結果、従業員のエンゲージメント向上につながり、退職の抑制につながったら、採用コストをぐーんと抑えることができてしまいます。10名をエージェントで採用する(1)と(3)を比べるとその差は約9,000千円!自己スキルアップ費用だけでなく、追加で研修を実施したり福利厚生を充実させる費用にも投資できますし、給与や賞与に還元できるかもしれませんね。
 
今一度、人事にかかるトータルコストの使い方を再考し、企業を持続的に成長させるためのコストの最適配分を検討してみてはいかがでしょうか。

VUCA時代のリーダーの役割 ~その2 ティール型組織、発達志向型組織(DDO)、ホラクラシー型組織~

前回のブログ「VUCA時代のリーダーシップ ~その1 リーダーの役割が変化している背景とは~」では、リーダーシップの発揮のしかたが変わりつつあるという点をまとめました。今回は、最近の組織開発論として注目を集めている3つの組織論を解説していきます。
3つの組織論に共通するのは、「トップダウン型」や「ピラミッド型」と呼ばれている組織の問題点や弊害を踏まえ、一人ひとりを統率ではなく信頼する組織体制を作っている点です。しかし、複数の人が集まって成果を発揮することは大変難しいことであり、コンセンサスを作ること、失敗を克服して発達させていくことが重要だとしています。

フレデリック・ラルー氏が提唱するティール型組織

ティール型組織とは、Amazonでの書評の解説を抜粋すると、「自主経営(セルフ・マネジメント)、全体性(ホールネス)、存在目的を重視する独自の慣行をもつ進化型組織」のことを意味します。
権力をトップに集め、同じ組織に働く仲間を権力者とそれ以外に分けるような組織は、組織内の権力は、戦って勝ち取るものという考え方が蔓延してしまいます。その結果、チームメンバーの中の個人的野望、政治的駆け引き、不信、恐れ、妬みが発生し、これらの感情が組織の足を大きく引っ張ってしまいます。
これは、トップダウン型で大きくしてきた日本の大企業だけの事例ではなく、世界中のいたるところで起きている問題だとしています。

これに対してティール組織は、目的を定めて、その目的にそって本人が自由にやりたいことをしてもらえば、最大限に成果を出してくれるという考えにもとづいています。一人ひとりのやりたいことの実現を重ねて組織そのものが発達していくことから、発達型組織(Teal organization)と呼んでいます。

ティール組織は、フレデリック・ラルー氏により提唱され、書籍は世界で20万部を売り上げたベストセラー本です。2月に日本でも発売され反響を呼んでいます。出版社の英治出版のサイトには、著者の講演動画(字幕付き)まで掲載されていました。 

ティール組織――マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現

ティール組織――マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現

 


ロバート・キーガン氏が提唱する発達志向型組織(DDO

www.dhbr.net

ロバート・キーガン氏はハーバード大学発達心理学の権威です。ギーガン先生は、著書の中で発達志向型組織(Becoming & Deliberately Develomental Organization=DDO)を提唱しており、この理論もとても話題になっています。著書名が「なぜ弱さを見せあえる組織が強いのか」という大胆かつ斬新なタイトルになっていることもひとつの理由でしょう。

なぜ弱みを見せあえることを求めているのでしょうか?ギーガン先生は、「ほとんどのビジネスパーソンが、自分の弱さを隠す仕事に多大な労力を費やしている」と説明しています。弱さを隠すということに不安を感じ、恐怖を感じ守りに入る、その結果、組織は硬直化し、変化が起きにくくなる・・・。
しかし、ビジネス上の課題を克服する時には、対立や恥辱を遠ざけようとする行動も克服しなければならないシチュエーションがあり、VUCA時代のような変化が大きく不確実性の高い時代には、強靭なトップダウン組織で統率を取った組織運営をするよりは、弱みを見せ合える組織でお互いが信頼し合いながら、人がありのままでいられる場所、ほかの人と結び付ける場所、高い水準に達することができる場所、やりがいを見出せる場所としていく方が効果的、という考え方にもとづいています。

ただし、DDOを成功させるためには、仕事での失敗というものを会社全体で受け入れたり、自分自身の弱点を認めたり、他者の弱点をフィードバックしても立場が危ぶまれない会社のサポートが必要です。弱みや失敗から得られた内省を通じて人が成長するプロセスをサポートする体制・しくみ・企業文化がきちんとしていなければ、DDOは機能しません。

ティール型組織との類似点も多いですが、発達心理学の教授の視点でまとめられたこの書籍も反響を呼んでいます。

なぜ弱さを見せあえる組織が強いのか――すべての人が自己変革に取り組む「発達指向型組織」をつくるなぜ弱さを見せあえる組織が強いのか――すべての人が自己変革に取り組む「発達指向型組織」をつくる作者: ロバートキーガン,リサラスコウレイヒー,中土井僚,池村千秋出版社/メーカー: 英治出版発売日: 2017/08/09メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見る
 

管理職不在のホラクラシー型組織

ホラクラシーとはヒエラルキーと対峙する組織の考え方です。ヒエラルキートップダウン型・ピラミッド型の組織構造のもとに成立しますが、ホラクラシーには役職がない自由な組織体制で、組織内の役職がありません。人=役職という融合を切り離し、人々は仕事を持つのではなく、多くのきめ細やかな役割を果たそうとする集団であるとしています。ホラクラシー型組織を成功させるためには、個々が自立的であること、なおかつ管理者も役職も不在の中でチームのコンセンサスを作るしくみを作る必要があります。

ホラクラシー型組織に取り組んでいる代表的な存在は、アパレルメーカーのザッポス社で、その動きに全米が注目しています。ザッポスの記事も紹介しておきます。

diamond.jp

 

VUCA時代のリーダーの役割 ~その1 リーダーの役割が変化している背景は?~

みなさんにとって「リーダー」とはどのような存在でしょうか?

ビジネスの場や組織におけるリーダーとは、チームの誰よりも仕事ができて、チームの誰よりも業務のことがわかっていて、どのような状況でも的確な指示ができることがリーダーの役割という認識だったりしませんか?
特に、40歳以上の方が社会人になった頃の理想のリーダー像は、まさに上述のようなリーダーだったりするのではないでしょうか。

 

しかし、最近の事例におけるリーダー論や、組織開発のトレンドを見ていると、リーダーの期待役割が変わってきているように思えます。今の時代におけるリーダーの役割とは、すべての仕事を把握しすべての事に対する指示を的確に出すということではなく、チームメンバー1人ひとりの力を信頼し、主体的な推進を支援する役割に変わりつつあります。そして、先進的な企業はリーダーの期待役割をいち早く変化させ、新しい時代のリーダー像を実現しやすい環境を整えているという印象があります。


さて本日は、なぜ今の時代にリーダーの役割が変化しているのか、その理由をまとめてみました。


(理由1)ビジネスの高度化・複雑化

インターネットが急速に発展して20年超。変化のスピードはアップし、競合がグローバルレベルに達し、新しいサービスが次々と立ち上がる時代となりました。そして、ビジネスニーズもめまぐるしい変化が起きています。
企業と組織にはありとあらゆる壁が立ちはだかります。その壁の中には、過去の経験だけでは乗り越えられないものが多く、何をすれば成功するのか、何をすれば解決できるのか、予測不可能なことがたくさん発生しています。これを世の中では、VUCA時代と呼んでいます。

www.nikkei.com


このような時代になると、リーダー自身も予測不可能なことが多く、旧来のようにリーダーに集中していた権限や意思決定にばかり委ねていては、競争に打ち勝つことができなくなっています。そして、意思決定の権限をリーダーに集中させるよりは、メンバー一人ひとりが意見を出し合う環境を作る方が成功可能性が高まる(失敗リスクが減らせる)、という考えに変わりつつあります。


(理由2)リーダー人財の若年化、レベルダウン

リーダー一人が管理できるメンバーの適正人数を示す指標としてspan of controlという
指標があります。VUCAの時代では仕事の内容が高度であり、リーダーが情報把握できる範囲があまり広すぎると管理不能になります。このような時代背景もあり、span of controlは少なくなる傾向にあります。
その結果として、リーダーを任せたい・任せなければならない従業員の必要数も増えるのは当然のことですが、だからといって企業にリーダー人材が豊富にいるかというとそうではありません。若いリーダー、経験の少ないリーダーが、チームの責任者を務めるシチュエーションが増えていたり、企業もそのような人材にリーダーを任せたいという思いを持っています。
リーダーができそうな人・やってほしい人をどんどんアサインしていく方針の下では、リーダーには強靭なリーダーシップを期待するのではなく、経験を通じてリーダーリップ力を養成していくことが優先されます。つまり、リーダーシップ力を学習中のリーダーの比率が多くなるということです。そのようなレベルのリーダーに、いきなり旧来の期待役割を期待しても、結果は出ません。リーダーシップ力学習中である前提で、組織を作っていくことが期待されており、そのような背景もあり役割の変化が起きています。

さて、次回は、VUCA時代のリーダーの役割としてどのような理論・トレンドがあるかについて紹介いたします。

社員が増え続ける会社が抱えているチームの問題点(タックマンモデル)

採用意欲の高い企業が多く人材獲得競争が激化していることは、このブログで何度も説明してきました。業績を順調に伸ばしている会社は、社員数も増えており、どんどん大きな会社組織になっています。


しかし、社員数が増えれば増えるほど組織の連帯感を維持するのはかなり難しく、様々な問題が勃発します。人は増えてるんだけど組織内はグチャグチャだったり、一人ひとりの関係性が壊れてギスギスしていたり、組織の問題を理由に退職していく社員が出たり・・・そんな悩みを抱えている成長企業・スタートアップ企業の皆さんは多いのではないでしょうか。

 

そして、すごい採用頑張ってるんだけど、中途採用数と退職者数合わせたらほぼプラマイゼロだったり、むしろマイナスだったり、なんて会社もあると思います。

これだと、中途採用の目的が「会社を成長させるための人員増強」のはずが「退職者の欠員補充」になってしまいます。これを続けているとポジティブな採用活動ができなくうなり、採用担当のモチベーションが上がらなくなってしまいますね。

 

業績好調な成長過程にある企業では、新しいメンバーが常にJOINします。新しいメンバーがJOINしてもチームが維持しレベルアップしていくためには、組織が成長していくライフサイクルのプロセスを1つ1つクリアしていく必要があります。

 

■タックマンモデルについて

www.kaonavi.jp

 

タックマンさんとはドイツの心理学者です。タックマンモデルは1965年に提唱されましたが、今でも組織開発の基本的事項として有名な理論となっています。

 タックマンさんは、組織形成のライフサイクルには次のような4段階があると提唱しています。

1、 形成期(Forming)
チームが形成されるが、メンバーは自らの役割がまだはっきりと理解できていない状態、チームメンバーは、まだお互いのことをよく知らない状態。この段階では、メンバー一人ひとりは期待と不安が入り混じった段階であり、経営者やリーダーに説明や指示を求めようとする。

2、 混乱期(Storming)
チームの課題を解決するアプローチを模索する状態にあり、一人ひとりが、それぞれ自分のやり方で課題に向かって動き始める。メンバー同士で仕事や価値観をめぐる個人的な衝突が起こるようになったり、チーム内のヒエラルキーを気にする動きが出始めたりする。

 

3、 統一期(Norming)
チームとしての行動規範や役割が明確になる状態。オープンな意見交換が行われ、お互いが認め合うようになる。皆で目標達成に向けての効果的なステップや各人の役割分担を検討するようになる。

 

4、 機能期(Performing)
チームが機能し、業績が生まれる状態。チームに一体感が生まれ、目標達成に向けて集中できるようになる。メンバーは共通の目的意識を持ち、効果的にコミュニケーションを取ることが出来るため、成果に向けて効率的かつ柔軟に動くことが出来るようになっている。

 

 

チームが確立するためには、すべてのステージを経験していかなければなりません。特に「1」や「2」のステージでは、衝突や混乱は避けられませんので苦しい状態が続きますが、経営者やマネージャーは根気強く粘り強くがんばって、次のステージに行かせなければならないのです。

 

ところが、個々の対立への恐れからか、実際には多くのチームが形成期を脱することが出来ないことが多いです。その結果、チーム内の人間関係がうまくいかずなかなかパフォーマンスが上がらない、そして人がなかなか定着しない・・・人が入れ替わるので結局組織がいつも形成期になってしまう・・・これでは悪循環が続いてしまいますし、組織のパフォーマンスが発揮できないままになってしまいます。

 

皆さんの会社でもうまくいっていない組織ってあると思いますが、きっとこの4つの段階の「1」や「2」あたりにあるではないでしょうか。そして、「1」と「2」の状態を抜け出せない「何か」が、会社の中に存在しているのではないでしょうか。

 

今ちょうど、この「何か」について高い関心を持っており、様々な事例や情報の収集をしております。私の中で何かをつかみ、記事にできるようになった時に、このブログでまとめてみたいと思います。 

エンジニア採用を成功させる(面談で魅力付けを行う)

エンジニア採用を成功させるシリーズの第2弾は、面接での魅力付けについて紹介します。

ひと昔前の面接と言えば、面接官から候補者への質問が中心でしたが、このスタイルが変わりつつあります。そして、面接の場をうまく活用して魅力付けができた企業が、優れた候補者を惹きつけ、他社の差別化を実現しています。今日はこのことについて取り上げます。

エンジニア採用を成功させる(エージェント採用を成功させる)についても、ご一読ください。

nbhero0426.hatenablog.jp

 

 1.すべての候補者を温かくお迎えする

従来の面接では、面接官の方から様々な質問を行いその質問に対して候補者答えていく形式でした。この形式の面接では「志望動機」「なぜ転職しようとするのか」「将来のキャリアプラン」を聞くのが定番です。また冒頭では、「面接の最後に質問の時間を設けています」などと発言し、最後に1、2個くらい質問を受けるという流れが多いです。
これは確かに教科書に出てくるような模範的な面接のスタイルであり、私も過去に所属した大手の会社の面接で、このようなスタイルでやっていましたので、自分なりのパターンとしてしみついていました。
しかし、とある人と面接した際に、このように言われたことがあります。

ちょっと質問がキツイんだよね・・・。ハイレベルで優秀な人を見極める時には突っ込んだ質問してもいいんだけど、もしかすると将来お客様になるかもしれない方なのだから、合否に関わらず好印象で終わりたいんだよね。できるだけ優しく質問してあげようよ。

これを聞いて、自分は今まで選ぶ側っていう立場で、かなり上から目線で面接をしていたんだな、ということに気付きました。一方的な質問のスタイルでやっていくと、次から次へと質問をしてしまい、その答えに一部不可解なことがあるとすかさず突っ込んでしまう。そして、鋭い突っ込みをいかにするかが面接官の腕のみせどころ、こんなふうに思っている方って意外と多いんじゃないでしょうか。
 
しかし、これを突き詰めていくと、どんどん質問そのものがキツいものになりがちです。
もちろんハイレイヤーの方を採用する時、答えに窮する鋭い質問を意図的にすることはあります。痛いところをついて反応を見る、これも必要な手段です。
ただし絶対に忘れてはいけないこと、これは「候補者と企業は対等な立場で、相互の理解の場とする」ということです。このスタンスを絶対に忘れてはいけません。
全ての候補者を温かくお迎えする、というスタンスを忘れずに面接に臨むとよいでしょう。
 

2.魅力付けを先に行う

これも従来の面接スタイルにありがちですが、いくつかインタビューをした結果どうも良い人財ではないという気がしてきて、途中で「これはないな」って思うことってありますよね。そうなった瞬間本人からの質疑応答もドライに対応し、余計なことを教えないように最低限形式的な回答してしまうことってありませんか?

しかし、今この瞬間においては自社の採用候補者かもしれませんが、もしかすると将来は自社のお客様になるかもしれないです。あるいはもうすでに当社の製品を使って頂いているかもしれません。もしも面接が不合格となった場合でも「入社のご縁はなかったけど、でも印象の良い会社だったなあ」、そんなイメージを持って頂けるように工夫する必要があります。

これを実現するためには、まず面接の冒頭で、企業側の紹介をしっかりしてあげるとよいでしょう。ついつい相手のことが知りたくて面接してしまいがちですが、そこはぐっとガマンです。まずは自社のPRをきちんとし、会社は何を目指しているのか、なぜ今このポジションを募集しているのか、できるだけ丁寧にしてあげましょう。きっと候補者の方は話を聞いているとどんどん魅力が高まってくるはずです。ある程度紹介できたな、というあたりから、本題の質問に入っていくとよいと思います。

また、候補者の方はとても緊張しているはずです。緊張していると思っていることがなかなか言えないこともしばしば。ですが、冒頭からの質問を避け、話を聞くところから始めてあげると安心感が出てきて、リラックスしながら話ができる点もポイントです。

3.候補者との共感を生む質問をする

面接は候補者からすれば、どのような人と一緒に働くかを確認する場でもあります。自分の価値を提供できそうか、自分の価値を理解してくれそうな会社(パートナー)であるかをよく観察しています。このことに注意を払い、候補者の専門性/性格/志向/環境を踏まえたうえで、候補者と共感できるような質問をしてあげるとよいです。

たとえばエンジニアの場合、上流工程に強い方もいればテクニカルに強い方もいます。職務経歴書で本人がどの領域に強いか、アピールしています。テクニカルに強いエンジニアには、テクニカルに強い人が面接官となり、テクニカルに関するインタビューを相互に交わしていきましょう。このようなコミュニケーションを行うことで、「あ、この会社には自分のスキルを理解してもらえる人がいるんだ」と安心できるようになります。

面接プロセスをルール化していくことは重要です。ですが、一次面接は部長、二次面接は本部長など、役職縛りの面接プロセスを設けている会社が多いです。当然、採用の意思決定をする方が会うステップは必要です。ですが、面接のプロセスのどこかでは、候補者のタイプに合わせて面接官を臨機応変に変えてみてはいかがでしょうか。